私が高校の時に、友人Kから聴いた話。
友人Kはある日曜の午後、遅れた腕時計の時刻を直そうと、電話機のプッシュボタンを押した。
「1」「1」「7」と。
「ただ今より〇時○分○○秒をお知らせします。チッ、チッ、チッ…」
女性の白々しいアナウンス音声が聞えてくる。Kは受話器を左肩と左の頬で押さえ、左手で腕時計を持ち、右手で秒針を0に来たところで止めて、長針をグルグル回転させた。
その時、「おい。K!ちょっと手伝ってくれ。一人じゃどうにもならん」
庭で日曜大工の作業をしていたKの親父が息子を呼んだ。しょうがねーなあ。
Kは受話器を切らずに電話の横に置き、庭に飛んでいった。
十数分後、電話に戻ると受話器を取り上げ、再び時刻調整を始めようと受話器を耳に当てた。
いつもの女性のアナウンスが聞こえる。
しかし、Kの耳に聞こえてきたその内容は…。
「…チョウ…チョウメノ、コバ○シサンノオタクデゴメイ…。…オナジク…チョウメノシラ○ワサンノオタクデニメイ。ヤ○ムラサンノオタクデイチメイ。オナクナリニナリマシタ。イジョウノギセイシャノカタガタハ…」 女性の声は淡々と喋り続けていたという。
いつもの口調で。
Kはとっさに受話器を叩きつけるように元に戻した。
「十何分も受話器を切らずに放っておいたら、電話って自然に切れるはずだろ?」
蒼白な顔でその体験を話すKの顔を見つめていた私の顔も、K同様、蒼白だったに違いない。
電話を切ったあと、数時間して勇気を振り絞り受話器を再び取り、電話会社に問い合わせたが、
「混線でしょう」の一言でかたずけられてしまったという。
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