以前、私がある事情で、あるお寺に御厄介になっていた頃の話です。
お寺の住職さん・・ここではDさんとしておきます。 当時、Dさんの奥さんTさんは妊婦さんでした。 ふたりとも気さくな方で、よくしてもらっていました。 それは、Tさんの出産まじかな7月半ばの蒸し暑い夜の事でした。 私は何時ものようにお寺の本堂に布団をひいて寝ていました。 すると・・どこからともなく・・・ 「にゃーにゃーにゃー」と子猫が鳴く声がしたのです。 それはそれはか細く・・今にも消えてしまいそうな弱々しい声でした。 猫好きな私は 「ああ、子猫がいるんだ・・」と普通に思い、翌朝・・・TさんとDさんに・・ 「Dさん、Tさん・・この近くに子猫がいるんですね。昨晩、とても可愛らしい鳴き声がしたものだから」 と云うと 「え・・子猫ですか・・・?」とDさんが 「ええ、たしかに子猫でしたけど、どうか、なさったんですか?」一瞬、顔色が変わったDさんですが、すぐに何時もの顔色になって 「え・・ええ、たしかに、この近くには猫が多いですよ・・・」と 「そうなんですか・・さぞ可愛いでしょうね・・」 「ええ・・・」 少し、Dさんの一瞬見せた顔色が気になりましたが、あまり気にはとめませんでした。 とめても仕方がないと思ったからです。 しかし、その夜、Dさんのお母上が私の部屋に訪ねてこられて、 「R(私)さん・・昨晩、子猫の鳴き声がしたといっていたね?」と云われるので 「はい・・、みゃーみゃー鳴いてましたけど?それが、どうなされたんですか?」 「あれは生身の子猫なんかじゃないよ・・Rさん・・・」 「生身の子猫じゃない?どういう事ですか?」 「いや・・最近は、そんな事が起きなくなったんで・・お前さんが、子猫というまで忘れておったんじゃが・・実はの・・」 と、Dさんのお母上は、こんな話をしてくれました。 昔、戦国時代に、ある猫嫌いな住職の奥方おり、猫が嫌いで嫌いで仕方がなく、ある年に子猫を何匹も焼き殺したというのです。
それ以来、時々、ああやって子猫の鳴き声が聞こえるというのです・・
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