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百話完結
●近所の怪談第三夜
全国よりご投稿頂いた恐怖体験談を掲載しています。
 

     
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怪談数  御 題    御投稿者様
0237 無音の交差点 逆神雨月様
その時のことを思い出そうとすると、どうも記憶が曖昧で今でも上手くいかないのですが・・・。
学生の頃だったと思います。中学か高校、そのくらい。
季節は「夏」でした。酷く蒸し暑かったのだけははっきりと覚えています。
私はその時多分、友人か誰かと待ち合わせのつもりでその場所のに居たのではないでしょうか。
交差点でした。どこにでもよくある頭上に歩道橋が架けられた、それが学校の近くであれば、登下校時の時間帯には大勢の小学生などがふざけ合いながら歩いていそうなそんな場所が、夕暮れ時でくすんだオレンジ色に染まっていました。
偶然なのかどうなのか、不思議なことにその時その場所には人影も通りすぎる車もなく、妙にがらんとした感じの風景を、私は何をするでもなく、ただ何とはなしに眺めていました。
すると突然前触れも無しに私の周りから、今の今まで耳に入っていた蝉の声や風鳴りといった一切の音がかき消えてしまったのです。
そして私の目の前にある車道を、形状しがたい「妙なモノ達」が、ゆっくりゆっくり通り過ぎ始めました。
それらは一見すると煙か靄の集まりのようであり、よく見ると人間のようでもあり、半透明で時々心臓が脈打つようにボゥッと淡い光を発していました。
何が起こっているのかも把握できずに呆然とする私の前を、一列になって粛々と「それら」は進んで行きます。
いったいどれくらいの間、その奇妙な無音のパレードを眺めていたのでしょうか・・・。
ふと気付くと行列は最後尾に差し掛かっていて、その一番後ろから少し間をあけ、全身黒ずくめで真夏だというのに同色のロングコートを着て、背中まで届く長い髪を後ろで一纏めに括った、のっぺりした顔つきの変に薄っぺらい印象の男が一人、大股で歩いてきました。
彼はその途中でふと私に気付くと立ち止まり、少しの間考え込むような困った顔をして何か思案しているようでしたが、ややあってて口の端に微笑を浮かべると、手袋をした手の人差し指を自分の唇に当て、「今見たことは内緒ですよ」といった感じでシィをして、また何事もなかったかの様に再び前を見て、そのまま歩き去ってしまいました。
その後のことは良く覚えていません。待ち合わせ場所に来た誰かと、そのまま遊びに行ったのか、どうやって家に帰りその日を終えたのか、その日一日の行動だけが私の記憶の中で、抜け落ちたパズルピースのように欠けてしまったまま、どうしても思い出せないのです。
いったい私の見たものは何で、彼は誰だったのでしょうか?
2004/05/
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