病院の夜は早く、そして長いのです・・・
そう、時間は夜の9時をゆうに回っていました。
その日は、朝から大変忙しく、同僚のA子がトイレに席を外した事など、誰も気付かなかったのですが程なく戻ったA子の様子がおかしいのに気付いたのはもう一人の同僚のS氏でした・・・・
S氏:「A子、どうした?具合でも悪いのか?」S氏の問いかけに、職員達が一斉にA子を見て居ると・・・
私:「・・・どうしたの?顔が真っ青よ!」
A子:「なんか、トイレが気持ち悪くて・・・
鉄さびって言うか、血の臭いが凄くて・・・」
彼女が言うには、トイレの洗面所で手を洗ってると、女の人が、個室から出てきて
「私の赤ちゃん、返して!」と、彼女の真後ろで、つぶやいたそうです。
ビックリして振り向くと、そこにはもう居なく、今度は、個室の中から、泣きながら
「私の赤ちゃん返して!」って声が聞こえ、洗面所一杯に、息苦しい程
、血の臭いが充満してきた。というのです。
その会話を聞いた皆は、しばし沈黙したのですが・・・・・
「A子は霊だって気づいてないな」と、そこに居る皆が悟り、目配せをして、仕事に戻ろうとしたその時、
「イヤア〜ッ!」A子の着ている白衣の腰から下が、見る見るまに、真っ赤に染まって行くではありませんか。・・・・・・
続いてS氏の「ウワア〜ッ!」と言う声。
指差す方向を見れば、ピンクのネグりジェ、肩までの髪はボサボサ、そして足を引きずりながら・・・
「私のあかちゃん、かえして・・・」と女の人が・・・
彼女は、検査室T・U・Vと、ドアを開けることなく、壁を通りぬけ
(検査室の壁は半分から上がガラス張りになっています)
固まってる私達をゆっくり一瞥しながらA子の側まで来た時、
「早く・・・」と言って、一瞬で私の前にやってきました。
「あなたの赤ちゃんは、もう居ないのよ。死んだのよ。あなたもね。」
私は心の中で話しかけました。
彼女はヘラヘラと、泣いている様な、笑っている様なそんな表情をしたまま消えました。
A子の赤く染まった白衣は捨て、また私達は、何事もなかった様に仕事に戻ったのでした・・
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